MBA取得は意味ない!?有識者の考えからMBA不要論を読み解く
有識者の中でも意見がわかれているのが、「日本人がMBAを取得して意味があるのか否か」という問題。ここでは有識者のさまざまな考えをまとめました。複数の意見をもとに、MBA取得に意味があるのか考えていきましょう。
MBAは意味なし?不要論はなぜ生まれるのか
MBAの取得に対する批判的な意見で有名なのは、カナダの大学教授であるヘンリー・ミンツバーグ氏と、早稲田大学ビジネススクールの元教授で経営学者の遠藤功氏です。
ミンツバーグ氏は、著書『MBAが会社を滅ぼす』で、ビジネススクールの教育方法に異論を唱えています。ハーバード大学のケーススタディを例にあげ、分析に偏るアメリカのMBAの教育法では、ビジネスの現場において不可欠なソフトスキルや実践的能力を養うことができないと批判しています。
一方遠藤氏は、著書『結論を言おう、日本人にMBAはいらない』の中で、日本のMBA教育の質が低いため、MBAが日本の企業に求められていないと指摘。高い費用の割に、経済的に採算が取れないといった主張がまとめられており、逆に経済的に採算がとれる海外のMBAを評価しています。
MBA批判からわかる成功者に必要な知識
ミンツバーグ氏は著書の中で、日本のビジネス教育について高い評価を与えています。良いマネジャーを育成するために、日本企業で行われているメンタリングやOJT、定期人事異動が有効だとしているのです。
さらにミンツバーグ氏と遠藤氏は、マーケティングやファイナンス、アカウンティング、経済学などのビジネススクールの学科については、学ぶ必要があるとしています。
つまり、双方の批判はMBAの学位取得についてのみであり、プロのビジネスパーソンとして成功するためには、ビジネススクールでのビジネス理論の習得が必須であると結論付けているのです。
ビジネス理論を学ぶべき理由
なぜビジネス理論を学ぶのかと問われれば、それはビジネスの現場で使われる“言語”だからだと言えます。外国へ行けば外国語を話せなければ苦労するように、ビジネスの場面ではビジネスの専門用語を知らなければ、会話すらままなりません。
特に、ファイナンスや会計学(アカウンティング)などの財務理論は、ビジネスの最終目的である“儲け”について話したり交渉したりする際に欠かせない知識です。経営戦略論やマーケティングについても、それぞれの場面で同様のことがいえます。
ビジネスの場面で専門用語がわからないと、ビジネスのプロとの会話が成り立たないことはもとより、ビジネスのプロはビジネス理論を知らない相手に対して、弱みを突くかのように攻撃してきます。「知らなくてもなんとかなるだろう」は、ビジネスでは通用しないのです。ビジネスのプロとして同じ土俵に上がるには、ビジネス理論を知っておかなければなりません。
またビジネス理論を知らないと、ビジネスチャンスをつかむことはもちろん、その機会さえ減ってしまう可能性もあります。話の通じる有力な相手と仕事をしたいと思うのが、プロのビジネスパーソン。言語がわからない人に、ビジネスの話を持ちかけるプロは皆無です。やりがいのあるビジネスが回ってこないにも関わらず、ビジネス言語を知らなくてもやっていけると勘違いしてしまい、さらに仕事がやってこないという悪循環に陥る危険性も。
あるいは企業のトップのような交渉相手を圧倒できる立場を獲得することで、ビジネス言語を交わさずとも太刀打ちできる可能性もあります。それが実現できないのであれば、ビジネス理論を学び、相手の攻撃を阻止する能力を習得することが重要です。
成功する実業家の思考
実業家として数々の受賞歴を持つ、マザーハウス社長の山口絵理子氏。「バングラデュでの起業」という挑戦を成功させた実業家の視点・ノウハウを活かして、ビジネススクールでのセミナーも行なっています。
山口氏は創業当初から、困難な理由にばかり目を向けるのではなく「どうしたらできるか?」という視点を大切にしていたそう。過去のデータや分析にこだわらず、自分の足で現地に赴き、自分の目で見て考え、行動したのです。その結果、バングラデシュのジュートを利用することを思いつき、現地の工場でバッグの生産を行い、日本で販売。年間で30億円の売り上げを叩き出すベンチャー企業を築き上げたのです。
本当に強いMBAホルダーになるには
MBAの取得を通して、過去の数字を元に分析するスキルが身に付く一方、データのない分野やベンチャー企業ではただの分析屋に陥るケースがあります。
もちろん、古くからある産業をはじめデータが膨大な分野であれば、その考え方だからこそ多いに活躍できるはずです。しかし、時代の先を読む人材を目指すためには、データだけに捕らわれずに、自ら道を切り開くことも大切です。